裏磐梯の春の訪れは遅く、
平地の会津盆地から1ヵ月も過ぎた4月下旬ごろ。
原生林のブナも日増しに芽が膨らみ、梢が褐色に色づき始め、
残雪の中からミズバショウが辺りをうかがいながら顔を出す。
春の終わりにはレンゲツツジが緑の中に映える。
| 裏磐梯の春の訪れは、かなり遅れます。平年の日平均気温は、3月下旬半ばになってようやく0℃になりますが、日最低気温の平均が0℃になるのは、4月下旬になってからです。これは会津若松市・喜多方市と比較すると、約1ヵ月ほど遅れています。 このころには、雪解けが始まります。積雪の表面が、日光で解かされ、夜から朝への冷え込みのため、凍って堅くなります。 堅くなった雪の上は、自由に歩きまわることができます。いわゆる「かた雪渡り」です。スキーを利用すれば、かた雪はよくすべり、未知のすばらしい自然を体験できるでしょう。かつては、ソリを使って農作業や薪の山出しなど、かた雪を大いに利用したまのです。 寒さや暖かさのリズムも、次第に早くなって、春の足音が近づくころ、「春の淡雪」ともいわれるボタン雪が降って、大雪になることもあります。また、日増しに日照時間も長くなって、ブナの木も褐色に芽が膨らんできます。 春は、日本付近を移動性高気圧と低気圧が交互に通り、前線をともなった低気圧が発達することが多くなります。寒冷前線の通過時は、南のち西よりの強い風が吹く、いわゆる「春の嵐」ともいわれています。 裏磐梯では、ほかの地方に比べると、強風は少ないのですが、年間を通してみると、3月から4月が比較的多いのです。しかし、山岳での風は、だいぶ様相が異なります。一般に、風は高さを増すとともに強くなります。これは、地面から遠ざかるにしたがって、地上との摩擦が少なくなるからです。 山を吹き下る乾燥した南風は、野山の雪を急激に解かし、融雪水を川にあふれさせます。過去には、この融雪水が引き金となって、磐梯山の北側の火口壁が、大きく崩れ落ちました。自然の力の驚異と恐ろしさを教えてくれます。 5月には山の雪も消え、裏磐梯にもようやく桜が咲き始めます。暖かい日差しは、今まで寒さに耐えた樹木の表情を和らげ、日一日と緑が多くなってきます。ワラビ・タラの芽・ゼンマイなどの山菜が裏磐梯の味を楽しませてくれます。 このころになると、移動性高気圧が帯状になって日本付近に停滞し、長いときには1週間ぐらい晴天が続くことがあります。 空気は乾燥し、春爛漫のおだやかな新緑の季節を迎えます。ときには夏のような暑さを感ずる日もあります。 |
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(裏磐梯自然ハンドブック/冨田國男・編/自由国民社より抜粋)
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